サステナブルな旅をしよう! 亀泉酒造 西原 一民さん
「サステナブル」という言葉を最近よく耳にするようになりました。一般的には「持続可能な」と訳され、もう少し分かりやすく言うと「ずっと続けていけること」となります。
仁淀川流域の6市町村には、1000年続く土佐和紙文化や、植物学者・牧野富太郎博士が愛した山、もちろん仁淀ブルーを満喫するアクティビティなど、他にもたくさんの体験プランがあります。
そのどれもが自然の恩恵をうけて成り立っているものばかりです。そして、そこには長い時間をかけて育まれた文化や自然を守りながら、魅力を伝え、残そうとしている人たちがいます。旅での出会いや体験を通して、持続可能な未来に少しだけ目を向けてみませんか。
「おいしい 」「たのしい」「 おもしろい」をモットーに土佐のうまい酒を世界へ
高知県の中央に位置する土佐市。市の真ん中を横断するように流れる仁淀川の支流、波介川のほとりに創業120年を超える酒蔵「亀泉酒造」はあります。
高知の米、酵母、水にこだわり、今や蔵の代名詞とも言える純米吟醸酒「CEL-24」は、日本のみならず海外の日本酒好きの中でも高い人気を誇ります。
蔵の前で秋咲きのひまわりが満開を迎えた10月、唯一無二の酒を作り続け「CELの魔術師」とも呼ばれる 亀泉酒造 社長 西原一民さんに酒造りへの思いを伺いました。
(西原さん)もともと「亀泉酒造」は酒造りへの思いを一つにする11人の同志で1897年に創業した酒蔵です。「亀泉」の名は参勤交代の頃からどんな干ばつでも涸れることのない街道一の名泉「万年の泉」を使ったことからついたと聞いています。今、創業時の系譜を継ぐのは私一人ですが、若い職人と一緒に毎日頑張っています。
高知のように台風が多く、高温多湿な地域では稲が倒れたり病気になったりと酒米が育ちにくい背景がありました。そこで高知の気象条件にあった酒米の開発が進み、現在では「土佐錦」「吟の夢」「風鳴子」「土佐麗」と4種類の酒米があります。
その4種類全てを使って酒造りをしているのは19ある高知の酒蔵の中でもうちだけだと思います。また「風鳴子」を使っているのも「亀泉」だけですね。
酒造りを知るためには米から作ろうということで社員が酒米作りも行っています。
(西原さん)今は丁度仕込みの季節。これは50%磨いた米で純米吟醸酒に使われます。
現在、高知全体で作られるお酒の60%は県外、海外に出荷されています。県内の消費量は少しずつ減ってきているのが現状ですね。
私達も県外の酒米を使うことはありますが、県外へアピールをするためにもできる限り高知の米、酵母、水で勝負をしたいと思っています。
(西原さん)これが「亀泉」の看板商品「CEL-24」です。リンゴやパイナップルのようなフルーティーな香りがするでしょ。今では、一年を待たず完売してお待たせするほど人気になりましたが、売り始めた頃は「こんなにフルーティーで甘い酒が売れる?」「香水にした方がいいほど香りが強い」と相手にされず全く売れなかったですね。今から27年前の話です。
1993年に高知県で開発された酵母「CEL-19」「CEL-24」。他の酒蔵が使用に消極的な中、当時、一番に手を挙げ唯一チャレンジをしたのが西原社長でした。「おもしろい!と思ったんですよ。そして純粋に旨いと思った。和食はもちろんフレンチやイタリアン、中華との相性もいいはずだという確信がありました」と当時を回想します。
(西原さん)最初は「CEL-19」で作った酒を抱えて東京に行って、居酒屋で「この酒、おもしろいでしょ」とついで回りました。すると、「赤鬼」や「串駒」といった「日本酒の聖地」と呼ばれる有名店においてもらえるようになって、そこから常連さんを中心に口コミで「すごい日本酒がある」と話題にしていただきました。
なんとなく手応えを感じられるようになったは17年位前からでしょうか。「いいものはいい、美味しいものは美味しい」と受け入れてくださったお店には本当に感謝しています。
アルコール度数や原料米、酵母など本来裏に貼付される内容をあえて表に貼ったラベルも「串駒」のおかみさんのアイデア。元々お店に持ち込んだ際のサンプルの名残なのだそう。今ではすっかり「CEL-24」の顔として認知されています。
(西原さん)「亀泉」の酒造りのモットーは「おいしい」「たのしい」「おもしろい」。全く売れなかった時代に「こういう日本酒もおもしろいでしょ」と売り歩いていたことからこれを基本理念にしようと思いました。
香りが豊かで華やかな今の日本酒のトレンドを切り開いた酒だと自負しています。最近でこそ色々なところで香りのいい日本酒が出始めていますが「うちは27年前から造ってるぞ」と思っています笑。
当時は、和食や日本食には合わないと敬遠されていましたが、今ではミシュランで星を獲得した寿司屋にもおいていただいています。高知の米、酵母、水で醸した酒が東京の一流と言われるお店で出されている、やってきたことは間違ってなかったなととても嬉しいですね。
(西原さん)予約で来て頂いた方には酒蔵見学と試飲をしていただいています。このバーカウンターは70年以上前に使われていた酒を絞る「槽(ふね)」という道具を再利用しました。
試飲は常時10種類程度ご用意しています。最近では、アジアや欧米からもわざわざ「亀泉」を目的に来ていただけるようになりました。
みなさんにはメロンやバナナ、洋梨、リンゴ、パイナップル…。フルーティな香りと旨みを楽しんでもらいたいですね。「CEL-24」はアルコール度数も低いので、日本酒が苦手な人でも飲みやすいと思います。「おいしい!」その言葉が聞けるとやっぱり嬉しいね。
最後は、酒造りの命とも言える仕込み水を。この水のおかけで我々は酒造りができる。感謝をしながら大事に使っていきたいですね。
(西原さん)バラエティ豊かなラインナップも、新しい酒造りにチャレンジすることも、やっぱり僕が日本酒が好きで、色々なお酒を飲んでみたいから。
今でも、日本各地を巡ってその土地ならではの酒を飲んで次の酒造りのヒントを探しています。日本酒の国内消費が落ち込んでいるという話も耳にしますが、やっぱり美味しい日本酒は日本人に飲んでもらいたいという思いがあります。その上で、海外も見据えながら高知土佐のうまい酒を世界にアピールできればと思っています。
これからも高知の米、酵母、水にこだわり「おいしい」「たのしい」「おもしろい」を合言葉にチャレンジ精神を忘れず、「良い」「佳い」「 酔い」 お酒を長く皆さまの元へ届けられるよう頑張っていきたいと思います。
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【亀泉酒造】
(住所)高知県土佐市出間2123-1
(電話)088-854-0811
(休み)土・日曜日、祝日、夏季、年末年始
(HP)https://www.kameizumi.co.jp/
(SNS)https://www.instagram.com/kameizumi_sake_brewing/
[試飲付き酒蔵見学について]
(見学受入可能日時)営業日 8:30〜12:00/13:00〜17:00
(見学受入可能人数)2人~10人
(申込方法)1週間前までに電話にて要予約
(参考)https://niyodoblue.jp/experience/detail.php?id=37
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