サステナブルな旅をしよう! MUKAI CRAFT BREWING ケネス ムカイさん
「サステナブル」という言葉を最近よく耳にするようになりました。一般的には「持続可能な」と訳され、もう少し分かりやすく言うと「ずっと続けていけること」となります。
仁淀川流域の6市町村には、1000年続く土佐和紙文化や、植物学者・牧野富太郎博士が愛した山、もちろん仁淀ブルーを満喫するアクティビティなど、他にもたくさんの体験プランがあります。
そのどれもが自然の恩恵をうけて成り立っているものばかりです。そして、そこには長い時間をかけて育まれた文化や自然を守りながら、魅力を伝え、残そうとしている人たちがいます。旅での出会いや体験を通して、持続可能な未来に少しだけ目を向けてみませんか。
本場アメリカのビールを 仁淀川町の皆さんと共に
仁淀川の上流域にあり、町の面積の約9割を山林が占める仁淀川町。仁淀ブルーと巨岩・奇岩の景観が楽しめる中津渓谷を過ぎ、さらに中津川を上流に上った谷あいに、2020年クラフトビール醸造所とタップルーム「BLUE BREW(ブルーブルー)」ができました。
ここでクラフトビールの醸造をしているのが、カリフォルニア州ロサンゼルスから移住をしてきたケネス・ムカイさん、正子さんご夫妻。
アメリカでの安定した暮らしを離れ、仁淀川町で第二の人生を送ることになったきっかけは、人懐っこくてちょっとおせっかいな町の人達との出会いでした。
(ケネスさん)僕と日本との出会いは、大学卒業後の1995年にALT(外国語指導助手)として来日したのが最初でした。赴任先は島根県の隠岐の島。丁度大きな台風の時で、その頃はまだ小さな船しかなくってひどい船酔いをして…。まだ島に着いてもいないのに「僕はここで何をしているんだろう。あぁ、アメリカに帰りたい」と思ったことを今でもはっきりと覚えています。
最初の2ヶ月はずっとホームシックだったけど、半年後にはこんな素晴らしい場所はないと感じるようになりました。島の人が本当に優しくてみんなが僕を助けてくれた。幸せな経験でした。
2年の期間を終え、アメリカに帰ってからは高校で化学と物理の教師を23年間続けました。その間も隠岐の島には毎年通っていたんだけど、同時期に高知県の佐川町で国際交流員をしていた従姉妹に隠岐の島の素晴らしさを話したら、「佐川町もすごいよ〜」って言うんです。
だったらと隠岐の島からの帰りに佐川町に立ち寄ると、夜の遅い時間にもかかわらず役場の偉い人がみんな待っていてくれた。そこで初めて高知の「返杯」を経験しました。あの飲み方は忘れられないね。誰も静かに座ってないの。一日で友達がいっぱいできた。楽しくて嬉しかったな〜。
(ケネスさん)従姉妹は一年でアメリカに帰ったけど、そこから一人で佐川町に遊びに来るようになって、8年くらい前に「もういいかげん移住してきなよ」って誘ってもらったんです。
「何しようかな」って聞いたら「ビール造ればいいじゃない」って。アメリカでは15年以上、自家醸造でビール造りをしていました。でも、その頃は公務員をしていて定年まであと7年って時だったから酒の席での笑い話だと思っていたんです。
--- 仁淀川町で第二の人生がスタート---
しかしそこから、役場や友人がケネスさんが移住をするための拠点探しや補助金の申請など、醸造所実現のために奔走します。笑い話だと思っていた話が徐々に現実味を帯びるにつれ、ケネスさんの心が少しずつ動き始めました。
役場の人々の熱意、友人と慕いいつも歓迎してくれる地域の人のおおらかな優しさ、そして何より世界に類を見ない程きれいな仁淀川水系の清流…。同世代の友人の死も重なり、先の人生を考えた末、長年務めた教師の仕事を辞め2019年に奥様と仁淀川町に移住し、2020年にこの場所で醸造所を開くことになりました。
(ケネスさん)ビール造りを始めてから、町の人が「ムカイさん、これ使わんね」と色々なものを軽トラック山盛りに積んで持ってきてくれます。「これ、なんね?」が僕の口癖になりました。これは「ニッキ(シナモン)」。
定番のビールに使っているクロモジも最初、居酒屋で偶然隣に座った地元のおじさんにすすめられました。2ヶ月くらい経った頃、そのおじさんが突然軽トラでやってきてどっさりクロモジを置いていったんです。量の多さにはびっくりするけど、みんな本当に優しい人ばかりで、教わることが多いです。クロモジのビールは6〜7回試作を重ねてやっと商品化できるところまでこぎつけました。
今ではうちのレギュラービールになっています。他には、お茶、生姜、山椒、さつまいもなど地元の名産品や素材を使い、常時7〜8種類を揃えています。
おすすめは、4種類の違ったフレーバーが味わえる「飲み比べセット」。
この日は、さつまいもを使用した「17」、しょうがや山椒を使った「2410(ニヨド)」、お茶の苦みが清々しい「439(ヨサク)」、爽やかな苦みが特徴の「MACHU PICCHU」の4種類。
ちなみに、ここで醸造される一部のビールには地元の「てっぺんテラス」の吉村光章さんと元役場職員の古味仁志さんが栽培しているホップを使用しているのだとか。
店内のタップハンドルには「ヒメシャラ」の木が使われていてとっても素敵。これも木工が得意な町の人がお店のためにと作ってプレゼントをしてくれたものだそう。
--- 美しい川を守るためにできること ---
最高のビール造りをするために、「MUKAI CRAFT BREWING」では製造過程で発生する排水にも心を砕いています。現在の法律では、小規模な醸造所から出される排水に関して明確な規制はありません。しかし、自然の恩恵をうけるビール造りにおいて排水の問題はケネスさんの懸念事項でした。業者に浄化施設の見積もりをとったらなんと1500万円。
それではと化学と物理の教師をしていた知識をフル活用して研究と試験を重ね、高知高専の生物や化学の先生方、他県の醸造所にも協力を得ながら、半年後オゾンと空気だけで排水を浄化できる装置を完成させます。
浄化された水は飲めるほどきれいで、かかった費用は1/100の15万円。
(ケネスさん)私達がここへ住み始めた頃は、一年を通して町のイベントがたくさんありました。おじいちゃんもおばあちゃんもみんなが参加してとても地域の力が強いと感じました。
でも、コロナで全部中止になって、今もほとんどの行事が再開されないままになっています。少しでも僕達がこの地域の文化や行事を継いでいきたい。そんな思いで日々模索しています。
(ケネスさん)「17」と名付けたこのビールの名前の由来は、仁淀川町の人口密度なんです。夢は「18」「19」というビールを作ること。でも、今はもう13くらいになってしまっているかな。人よりタヌキの方が多いかもしれない。
この町が大好きだから、地域の皆さんに温かく迎えてもらった僕達のように、仁淀川町に移住する人がもっともっと増えて欲しい。そして、誰でもWELCOMEな町にしたい。そのためにも、最高のビールを造って町を元気にしたいし、この町の魅力を後世に伝えていきたいと思います。
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【BLUE BREW by ムカイクラフトブルーイング】
(住所)高知県吾川郡仁淀川町下名野川1131-4
(電話)050-3701-9091
(営業日)公式HPよりご確認ください
https://mukaicraftbrewing.com/pages/mcb-taptoom
(HP)https://mukaicraftbrewing.com
(SNS)https://www.instagram.com/mukaicraftbrewing/
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