サステナブルな旅をしよう! 横倉山トレッキングガイド 所谷眞智子さん
「サステナブル」という言葉を最近よく耳にするようになりました。一般的には「持続可能な」と訳され、もう少し分かりやすく言うと「ずっと続けていけること」となります。
仁淀川流域の6市町村には、1000年続く土佐和紙文化や、植物学者・牧野富太郎博士が愛した山、もちろん仁淀ブルーを満喫するアクティビティなど、他にもたくさんの体験プランがあります。
そのどれもが自然の恩恵をうけて成り立っているものばかりです。そして、そこには長い時間をかけて育まれた文化や自然を守りながら、魅力を伝え、残そうとしている人たちがいます。旅での出会いや体験を通して、持続可能な未来に少しだけ目を向けてみませんか。
ありのままが美しい 横倉山は私にとって庭のような場所
越知町にある横倉山は、NHK連続テレビ小説『らんまん』のモデル、植物学者の牧野富太郎博士が足繁く通い、多くの新種の発見や命名に関わった山として知られています。横倉山は、約4億年前に南半球にあったゴンドワナ大陸から分裂し、長い年月をかけて今の場所まで移動してきました。複雑な地質がゆえに多様な植物が残り、樹齢数百年のアカガシの巨木や約1300種類もの植物が自生しています。
また、安徳天皇が屋島の戦いののち、四国に渡り隠れ住んだ地として伝説の残る場所でもあります。
そんな横倉山に魅了され、豊かな森を守りながらその魅力を一過性のブームで終わらせることなく、長く多くの人に伝えていこうと頑張る人たちがいます。
横倉山トレッキングガイドの所谷眞智子さんもその一人。横倉山のふもとで生まれ育ち、後に町を離れますが17年前に越知町にUターンしました。幼い頃から愛読書は植物図鑑で、尊敬する人は牧野富太郎博士。調査員として「高知県植物誌」にも関わった植物の愛好家です。
横倉山の自然と共に進める持続可能な未来に向けて、現在の取り組みを伺いました。
(所谷さん)この小さな森の中には、長い時間をかけて今の環境に適応し、生き続けている希少な植物がたくさんあります。『らんまん』にも登場した、牧野博士が命名した「コオロギラン」は実は大きさが5cm程で、まるでマチ針みたいに小さな花なんですよ。
また、森に生える「カゴノキ」は漢字にすると「鹿子の木」、木肌が鹿の模様に似ているから。「バクチノキ」は冬になると皮が全部落ちて、身ぐるみを剥がされたみたい見えることからその名前がつきました。
そんな豆知識を伝えながら、楽しく山を感じてもらいたいと土佐弁丸出し!でガイドしています。
----------ちょっとしたことを教えてもらうだけで、とても物知りになった気分。そして、なんだか山の植物の見方が変わってくるから不思議です。
(所谷さん)そうでしょ。でも、越知町に住んでいる人にとって、横倉山は小さな頃から登っている、いつでも登れる身近な山。だから皆さん、残念ながら横倉山のことをあまり知らないんです。植物のこと、歴史のことを地元の人にこそ知ってもらいたいので、教育委員会と連携して毎年地元の小学生向けに体験登山を開催しています。
ここは、植物の宝庫ですよ。
(所谷さん)ガイドをしているとこんなに低い山でも、毎回登る度に新しい発見があって、それが本当に楽しいですね。晴れている日も気持ちがいいけれど、雨上がりの霧がかった森は、静かでうっそうとしていてそれはそれは美しいですよ。
もちろん、私だけが知っている秘密の場所もあります。横倉山は私の大好きな庭のような場所ですね。
---------美しい横倉山の自然を残すために取り組んでいることはありますか?
(所谷さん)テレビの影響もあって、以前に比べたくさんの人が山へ足を運んでくださるようになりました。「コミヤマスミレが見たい、コオロギランが見たい」と目的を持って全国から来ていただくのはとても嬉しいことですが、故意ではなくても花の咲く場所が踏まれてしまうこともあります。
ロープを張って立入禁止の案内を出す話も出ましたが、やっぱり横倉山はありのままの姿が美しいですし、それを皆さんに見て心に残して帰ってほしい思いがあります。話し合いの結果、私達ガイドを中心に声がけをして啓蒙活動を続けていくことになりました。
(所谷さん)季節を変えて再び訪れていただいたり、丁寧なお手紙をくださったり…。ガイドをしていてよかったな~と思うことはたくさんあります。まだまだ現役で頑張るつもりですが、私の植物の知識を若い世代に伝えていくことも大切だと思っています。
若手ガイドから「僕のガイドと所谷さんのガイドは何が違うんですか?」と聞かれると「それは年の功よ」なんて答えていましたが、知識をベースに横倉山の魅力を広められるガイドを育てていかなければいけません。経験しながら学んでもらうため、現在はサブガイドとして同行してもらっています。75歳まではなんとか続けたいですね。
横倉山の森の中にひっそりと建つ杉原神社には、これまで地域からの寄進によって支えられてきた足跡が残っているそうで、現在でも地域の人によって神祭が行われています。
「地域の宝をありのまま守り、伝え、残す」
そのために必要なことは、規制を敷きルールを作ること以上に、一人の人間として訪れた人と交流し、多くの人に横倉山の素晴らしさを伝えることだと所谷さんは言います。
コオロギラン、コミヤマスミレ、バイカオウレン、ヨコグラツクバネ、ジョウロウホトトギス…。所谷さんの口からは、よどみなく次々と植物の名前が出てきます。幼い頃から横倉山に親しんできた所谷さんにとっては、古い友人のように大切な草花たち。
キリッと凛々しいその横顔が、植物の話になるとふわりと柔らかくなる、そんな植物へのやさしい眼差しが印象的でした。
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【越知町観光協会】
(住所)高知県高岡郡越知町越知丁甲1736−7
(電話) 0889-26-1004
(メール)info@ochi-kankou.jp
(営業時間)8:30~17:00
(HP)https://ochi-kankou.jp
所谷さんがガイドをする
横倉山トレッキングツアーは 越知町観光協会までお問い合わせ下さい
https://ochi-kankou.jp/asobu/mtyoko/mtyoko.html
※横倉山内でのすべての植物は、採取が禁止されています。
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